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第1回 インド政府は鎖国をするつもりか

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 | 投稿日時 2010-6-7 21:03 | 最終変更
ktakeda1  一人前 居住地: 3-11-13-111, SAKAE-CHO, FUCHU, TOKYO 183-0051  投稿数: 115
2週間にわたるインド・中国出張から帰ってきた。インドから帰国、成田に夕方について翌朝には大連というあわただしい日程だったが、それでも事務所のある府中まで一度帰ってきた。成田にとんぼ返りである。初めてインドに行った時の事、ムンバイの空港近くのソフトウェア会社で「この場所なら深夜に米国から帰ってきても翌朝には欧州に行ける」と言われたことを思い出した。その時は自分には関係の無い話だと聞いていたが、今から考えると少しうらやましい。さすがに3回目の成人式を迎えるようになると、府中とんぼ返りは少々辛い。
5ヶ月ぶりのインド・中国である。また新しい発見がたくさんあった。NIKKEINETの「インドIT見聞録」は3月で終了したが、装いも変えて「(続)インド・中国IT見聞録」として再開である。やはり再開初号は今回の出張での新しい発見から書こう、と考えていた。
 しかし、そんな話をしている場合ではなくなった。大連についたとたんに日本の知人からメールが来た。

■突如として就労ビザ申請が却下に

 知人は5月末からインドに渡り、日本語講師として若いインド人を教える予定でいた。昨年からインドの就労ビザ発給が厳しくなっていたのは当然わかっており、新しいガイドラインに沿った雇用条件で就職し、必要な書類をそろえて提出した。それでも却下されたので筆者のところに問い合わせてきた。しかし何でなのか、筆者にも情報は無い。昨年の段階で、日本語講師だけは別扱いで厳しくないと聞いていた。だから「日本語講師」として就労することを明確に書いたかとしか返信できなかった。
 そういうやり取りをしているところに、チェンナイの日本領事館から連絡が入った。
 少し長いが引用してみる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1 インド政府は査証発給に関する新たなガイドラインを作成し4月19日から実施しています。

2 同ガイドラインは非公表ですが,主なポイントは次のとおりです。
(1) 就労査証は,熟練労働者で年収25,000米ドル以上の者が対象。就労査証の有効期間は,通常は2年間。ただしIT関連の場合は3年間。
(2) 就労査証を有する者の家族については,就労査証の有効期間と同じ期間有効のX査証の発給を受けることができる。これにより,インド出国後2か月間再入国できないという観光査証の不都合を避けることができる。

3 なお,就労査証の発給数をプロジェクト従事者の1%とする制限については,年収25,000米ドル未満の者が対象です。
―――――――――――――――――以上―――――――――――――――――――――
 つまり、簡単に言うと20万円以上の月収が無いと就労ビザを発給しないということのようだ。日本企業の駐在員は別にして、インド現地採用で働くそれだけの収入のある日本人がどれだけいるのか。たしかに0では無いだろう。しかし事実上、大企業の駐在員以外はインドでの就労禁止というのと同じである。
いや、大企業も影響を受ける。駐在員の場合、安い現地給と日本での国内給とに分けて支給されているが、このガイドラインは現地給の話である。これでは現地給の大幅な高騰と税負担を招いてしまう。

インドファンの日本人が不安の塊に

 すでにバンガロールの日系企業に派遣で働こうとした日本人に対する就労ビザ発給が拒否されたとの情報を聞いた。また筆者の知人でも、最初に記したように拒否された例がある。ただしこの場合にはやはり日本語講師ということで3回目の申請で認められたようである。そうかと思うと、4月末に申請した自営業の方は何事も無く認められた。どうやらビザ発給の現場も混乱しているようである。
 インドの現地企業で働く日本人は、日本語講師を中心として不安の塊になってしまった。第一に正確な情報がどこにも無い。日本語講師もこのガイドラインが適用されるのか否か、噂レベルの話で、東京と大阪のパスポートセンターでは基準が違うという情報もある。そんな事はあり得ないはずだが、当事者にとっては真剣な話である。
 大企業の駐在員はまだ良い。企業として対応するのだから、本人の税負担が増えない限りは問題無いだろう。

 企業の駐在員以外にはどんな日本人がインドで働いているのか。
・ 日本語講師
・ インドに住みついて働いている方
・ 人材派遣会社からインド企業や日系企業に派遣されている方
・ インドのIT企業等に採用されて働いている方
・ インドで事業を立ち上げようとしている方
様々である。しかし彼らには共通点がある。
・ インドが好きである。



日本では考えられないような苛酷な生活環境の中で、同じようにバスで職場に通い、同じようにランチを食べ、一緒に働く。好きでなくて出来るわけが無い。
・ 給料が安い。
現地採用の場合、基本的にはインド人と同じ給与体系である。大企業の駐在員のように国内給があるわけではない。日本人だからと言うことで少し多めの給料をもらっている方もいるが、逆のケースもある。多くの場合はインド人マネージャより低いし、日本語が少し出来るインドの若者よりも確実に給料は少ない。
15000とか20000ルピー(約4万円)の安い給料でも現地企業で働いていた日本人、あるいは30000ルピー(約6万円)の現地給の大企業駐在員、これが一昨年あたりからだんだんと厳しくなってきた。最低基準が50000ルピーになり60000ルピーになっていった。
安い給料でも頑張っていた彼らの給料が増えたのは喜ばしい? そんな事は無い。家賃を給料に組み込んだり、ランチ代を組み込んだりして名目上の給料が増えただけである。逆に税金が増えて手取額が少なくなるケースも出てきた。それが今度は100000ルピーである。
以前、IT企業に働く日本の若者に、何でそんなに安い給料で働けるのかを聞いてみた。彼は即座に「自分に対する投資です」と言い切った。その彼らを不安におとしめているのである。

■リーマン・ショックで一変したインドの査証政策

 この問題は日経コラム「インドIT見聞録」でも書いた。「第84回 インドのビザ厳格化、日本の大手にも飛び火」を見ていただきたい。
(http://it.nikkei.co.jp/business/column/takeda_india.aspx?n=MMITzp000028102009)
 中国企業の誘致を狙って、インド政府は大幅なビザ発給緩和を行った。そのために最大で25000人もの中国人労働者がインドで働くようになった。しかし結果としてはインド政府の期待通りにはインド人の就業チャンスがそれほどは増えなかった。その問題の真っ最中にリーマン・ショックが発生し、欧米から続々とインド人技術者が帰国せざるを得なくなった。そこでインド政府は査証政策をドラスティックに変えた。ほとんどの中国人が退去させられた。残ったのはわずか3000人である。また、日本人技術者も次々と帰国せざるを得なくなってきた。
 自国の労働者の職が無いのに、外国人がインド人の仕事を奪うのは許せない。単純に言えばこういうことである。インドの政策の基本は、いかにしてカースト間の争いを防ぐかである。そのためには貧困層に職を与えなければならない。だから外国人の就労を厳しくする。それだけである。ある意味、非常にわかりやすい。善し悪しは別として、これが欧米だとか日本の政策ならである。「斜陽の国」は当然のようにそうするだろう。
 日本などは典型である。「少子化対策として外国人労働者を受け入れなければならない」と言いつつ、やっていることは逆である。排斥である。ODA予算をふんだんに使ってアジアの看護士を何百人も日本に呼び、2年間で日本語能力試験に合格しないといってはほとんどの看護士を追い返す。これなどは典型であろう。根本は「斜陽の国」だからである。
 しかしインドは別だろう。中国とともに最も伸びている国である。その昔、世界国家「唐」は世界から人々を受け入れた。米国が最も活力にあふれていた時代も世界から移民を受け入れた。外国の話だけではない、インドもそうだ。ムガール帝国の時代も同じだろう。
 現在の韓国もそうだ。現代自動車、サムスン電子、LG電子といった韓国を代表する企業はどうやって成長したのか。日本を初めとした各国の優秀な技術者を引き抜き、品質の良い部品を集め、商品を作っていった。品質を高め良い商品を作る、そのためには外国人技術者もどんどんと利用する。これが伸びている国のあり方ではないのか。

■どこで日本人がインド人の職を奪っているのか

日本人IT技術者がインド企業で働く。今のインド政府の考えでは、1人の日本人がインドで働けば1人のインド人の職を奪ってしまう、こういう事らしい。いや、それだけではない。インドのIT産業は欧米で認められているのに、日本でインドITの売上げが増えないのはおかしいと言う。「優秀なインド人ITエンジニア」を使わない日本は間違っていると言う。インドIT企業から日本人技術者を追い出して対日売上げが伸びると考えているならおめでたい限りである。
言語の違いなどは小さい問題だ。物事に対する考え方、常識と言うレベルでインドと日本では大きな違いがある。その間隙を日本人技術者がインドに行って埋めているのである。
安い給料でも自分に対する投資である、日本とインドITの掛け橋になりたい、こう思って働く日本人がどこでインド人の職を奪っているのか。逆である。彼らの存在こそインドの職を増やす糧である。

■弱腰の日本政府

この問題に対する日本政府の対応はどうか。4月19日のインド政府の決定に対して、残念ながら日本大使館が行っていることは新ガイドラインを日本企業、日本人会に伝達しているだけである。本来、ビザ発給は双務的である。一方の国が緩和するときには相手も緩和する。制限を加えるときには相手も制限を加える。これが世界の常識である。
インドが制限をかけるなら、日本政府もインド人の日本入国に対して制限をかける、これくらいの姿勢で臨むのが普通であろう。
4月29日から4日間、直嶋正行経済産業相がインドを訪問した。ちょうど新ガイドラインが通知された直後である。環境関連技術、エネルギー分野での両国の関係強化を目指すとの事であるが、ビザ問題で抗議したとの話はついぞ聞かない。それは外務省の所管とでも言うのであろうか。そんな事よりもインドへの売込みが先であり、相手を怒らせることは無いとでも考えているのか。
結局、一方的な通知を受け入れてしまった。大企業の売り込みの後押しはするが、草の根レベルで活動している日本の若者の不安などは知ったことではないようだ。

■まずは日本人の情報共有を

政府が頼りに成らないのだから仕方が無い。自分たちで何とかするしかない。まずは正確な情報を把握することだ。申請がうまくいったケース、却下されたケース、提出した書類、却下理由等々の情報を集めることからしか始まらないようである。
しかしこんなことを書けば、私もますますインドから嫌われる。このコラムはNIKKEINET時代から評判が悪い。中国人からは「竹田さんはインドの肩ばかり持つ」といわれるが、インド人からは「竹田さんは何でそんなにインドの悪口を言うのだ」と言われてしまう。
昨年の秋、京都、大阪、奈良にまたがる「関西文化学術研究都市」で開催された「インドITクラブ」に参加した(第85回インドでのオフショア開発 成功しないのはだれのせい? http://it.nikkei.co.jp/business/column/takeda_india.aspx?n=MMITzp000011112009) 日本に進出しているインドIT企業の集まりで、インド大使館も後援している。そこで大使館のお歴々の前でこのビザ問題について発言した。当然のように大使館からの回答は無かった。
今年の2月には岩手県の盛岡市でもインドITクラブが開催され、出席して来た。最後に質疑応答の時間があったが、急に「補足説明をします」とかで質疑応答の時間がなくなってしまった。どうやら私には喋らせたくなかったようである。
15年前から一貫としてインドITとの協業を目指しているが、なかなか理解はしてもらえないようだ。

■大連の話も

長くなってしまった。しかしこのコラムは「インド・中国IT見聞録」として再開した。その1回目である。久々に大連に行ったのに、何も書かないと言うのも拙い。詳しくは次回として、1点だけ書いておこう。街の雰囲気である。
チェンナイから東京に帰って、すぐ次の日に大連に行った。大連の街が一番明るかった。
昨年の前半、オフショア開発は壊滅、郊外の開発区では日系企業の大量リストラで失業者だらけとかの暗い話ばかりであった。やっとオフショア開発も増えてきたようだ。それよりも私はまったく知らなかったのだが、日経新聞の5月末の大連特集によると、郊外の開発区が復活したようだ。東北3省のけん引役の復活である。明るいのも当然だ。



今回は貧乏旅行、インドでは通勤時間帯をずらしてバスで移動した。大連では主に路面電車202路線を利用した。IT企業が集まっている高新園区から私の宿泊しているホテルの前を通って、市内随一の商業地区まで1元で行ける。通勤時間帯でも日本のようにギュウギュウに押し込むような事はしない。肩が触れ合う程度に混めばそれ以上は乗せない。だから快適である。それでも車内は騒がしい。携帯電話も何もお構いなし、それ以上に大きな声で乗客同士が喋りだす。明るい顔で喋っているから煩いという感じではない。荷物が多かったとはいえ、電車の中で若者夫婦に席を譲られたのだけは少し複雑な気分であった。詳しくは次回に。

今回は再開第1回目、簡単に書こうと考えていた。しかし結果としては今までで最長になってしまった。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
以前と同じように2週間に1回のペースで掲載する予定です。読者のご意見もどうぞ。ただし原則として実名でユーザ登録していただいた方だけが書けるようにします。

また、IT見聞録以外にも、次のような記事を考えています。
・ 日本人が安心して食べられるインド・中国の食
美味しいかどうかもありますが、安心で健康的な料理・店の紹介。
これは私が行った店限定です。
・ 中国BPO事情
各企業の紹介フォーラムにしたい。
・ 中国各地のソフトウェアパークの紹介
  

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■ETERNAL TECHNOLOGIES Ltd. 竹田 孝治ktakeda1@eternal-t.com zhutian0312@gmail.com
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■Facebook/Twitterで情報発信:Zhutian0312

投票数:118 平均点:5.76
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010-6-8 11:55
rorin  新米 居住地: 中国大連  投稿数: 1
長い間、ありがとうございました。
今後もどんどん、大連をはじめ、いろいろな話題で活躍してください。
投票数:115 平均点:5.74
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010-6-10 0:57
ishizaki  新米 居住地: 千葉県千葉市  投稿数: 1
再開おめでとうございます。
竹田さんのインド・中国情報、楽しみにしております。
インドのビザ申請の件、今後どうなっていくのか気がかりです。
投票数:97 平均点:4.95

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